本研究室の分析事例を紹介します。
インスタントコーヒーの香り分析
インスタントコーヒーは、その製法によって“フリーズドライ”と“スプレードライ”の2つに分類することができます。
ご存知のとおり、インスタントコーヒーはコーヒー(液体)を乾燥させ、粉末状にしたものです。その際、
スプレードライは加熱しながら水分を飛ばす方法、フリーズドライは低温・真空下で水分を飛ばす方法になります。
以下の図は、上記2つのインスタントコーヒーの香り成分をGCMSで分析した結果です。
図中の一つ一つの山のような形状(ピーク)は、コーヒー中に含まれる様々な香り成分を示しており、
ピークの高さが高いほど香り成分が多いことを表しています。
ここで、インスタントコーヒー中の代表的な香り成分(図中の①~⑦のピーク)を以下に示します。
①ピリジン、②2-メチルピラジン、③2,5-ジメチルピラジン、④2,6-ジメチルピラジン、
⑤2-エチルピラジン、⑥2-エチル-6-メチルピラジン、⑦フルフラール
これらの香り成分は、コーヒーの香りを特徴づける香り成分(キーフレーバー)であり、
フリーズドライは、スプレードライよりも香り豊かであることが読み取れます。
フリーズドライ製法は熱を加えないので、風味や香りを逃さないのが特徴であり、
分析結果もそれを証明しています。
日本酒の香り分析
日本酒の中でも大吟醸酒は、華やかでフルーティーな香り(吟醸香)を有しています。
大吟醸酒をGCMSで分析した結果が以下の図となります。
図中の①のピークは、酢酸イソアミルという成分であり、吟醸香の香り成分の一つです。バナナのような香りがします。
②のピークは、カプロン酸エチルという成分であり、吟醸香の香り成分です。リンゴのような香りがします。
分析機器を利用することで、日本酒の吟醸香を数値的に評価することが可能になります。
菜種油の香り分析
菜種油は、広く利用されている植物油の一つです。品種改良された菜種を用いたものはキャノーラ油と呼ばれます。
また、菜種油や大豆油などの各種精製植物油を混合したものをサラダ油と呼び、料理に欠かすことができません。
植物油を長期保存すると、空気中の酸素と反応(酸化)し、不快な臭いが発生し、風味が劣化することがあります。
さらに酸化が進むと毒性を示すこともあります。このような油脂の劣化現象を酸敗または変敗と呼びます。
以下の図は、菜種油と酸化した菜種油の香り成分をGCMSで分析した結果です。
ここで、酸化した菜種油中の代表的な香り成分(図中の①~⑥のピーク)を以下に示します。
①ヘキサナール、②オクタナール、③ノナナール、
④プロピオン酸、⑤吉草酸、⑥カプロン酸
①~③の香り成分は、アルデヒドという化合物であり、青臭さや油臭さの原因物質となります。
また、④~⑥の香り成分は、遊離脂肪酸という化合物であり、汗のような臭いがします。
①~⑥すべての香り成分は、油脂が酸化劣化することで生成する化合物です。
このように、GCMSは良い香りだけでなく、不快な香りを評価することも可能です。